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    2009年7月1日水曜日

    村上春樹さんの新刊

    数日間、1Q84を夜中に幸せに読みすすみ、朝3時半までかけて読了。

    あらためて、村上春樹さんという作家はものすごいストーリーテラーだと思う。これだけ複雑な物語を頭のなかに描き、それを他者に伝えていくなんて、とてつもないことだ。
    とにかく、今回はキャラクターも良かった。青豆、天吾、ふかえり、そしてリーダーでさえも。女性をここまで描けるなんて!

    私はこの世の中をもっと知るために、あるいは人類を「体験」し、より「理解」しようとするために、映画を見たり、本を読む。でも、村上さんの書く本を読んでいると、純粋なストーリーだけでなく、その後ろにある彼の息づかい、その文章を紡いだときの彼の表情みたいなものまでをすごく感じる、想像する。 これは、読書を邪魔するようなものではなくて、逆に2倍に面白くしているものだ。
    たぶん、ストーリーを純粋に楽しむのが映画や本の極意だと言うひともいると思うけれど、私がひかれるのはストーリーはもちろんだけれど、その後ろにいる「作家」の息づかいを、より感じさてくれるようなものだと。だからデビッド・リンチも実は大好きなわけで。
    (その作家性が嫌味になってしまう人もいるけれど、村上さんやリンチはだいじょうぶ)

    青かった大学時代にいつも、なぜ人は生きるのか、などと考えていたとき、「羊をめぐる冒険」を読んで、そういうあやふやな疑問を持っている私のような人間を包括 し、創造力の羽を与えつつ、ちょっとした居場所を作ってくれるなと思い、村上さんの作品が好きになった。だからずっと読み続けている。19才のときロンドンに半年いたのだが、あまり良い思い出はないのだけれど、村上さんの小説を繰り返し読むことくらいが楽しみだった時もあった。
    それ以来、人生を歩む中で、私はNYに住み、ドキュメンタリーを撮っていたり、ボリウッドが好きになったりして、色々な好みやなんかもかわってきたけれど、昔のexistential crisisを持っていたような自分は今でも自分の中にあって、彼の小説を読むとその感覚がすごくよみがえってくる。でも、前ほどそのなかで迷子になった りしない自分もいる。

    「ねじまき鳥クロニクル」あたりから、村上さんの小説が少しかわってきた、というのは私も感じているけれど、彼が人間として、あるいは作家として、(私が言うのも とてもおこがましいが)ものすごい職人技術を身につけ、なんか「ものかき」の極限みたいなものに挑戦していっているような気がしてならない。
    その職人技術たるや、もちろん一般受けのストーリーを書いてベストセラーを続出させる(現にベストセラーだけれど)、とかそういうものではなくて、「今までつきつめてきたものを、どこまでまとめて、安定して、コントロールしながら文章で表現できるか」という、ある意味数学の謎解きのような技術のような気がする。言っている意味がわかるといいのだけれど。
    とにかく、「自分をコントロール」というキーワードに集約される。村上さんの、ストイックそうな早起きして書いて、ジョギングする、という生活も反映しているのかもしれない。

    ただ、彼がいま作家として目指そう(もし彼がなにかを目指しているとすれば)としているところは、一般の読者である私からとても離れているところなのかなー、という感じもする。それはそれで全然かまわないのだけれど。今回の1Q84の大ざっぱな部分での読後感は「ねじまき鳥クロニクル」や「海辺のカフカ」に受けたときとちょっと似たような印象だ。好みからいえば、私は「ねじまき鳥クロニクル」のほうが「1Q84」よりも好きだし、「海辺のカフカ」よりも「1Q84」のほうが好きだ。
    そのなにか、すごく上の(あるいは遠い)地点を目指し、同時代に生きる作家である村上春樹さんから目が離せないし、いつまでも新刊を楽しみに読み続けたい、と私は思っている。どんどん彼が先に行っているのを、後ろからとても興味深く、敬いをもって、「そうくるのかー」と眺めている感じ。

    3 件のコメント:

    Shomyo さんのコメント...

    村上さんのイスラエルでの受賞スピーチに感銘を受けていました

    Makoto Sasa さんのコメント...

    「卵と壁」ですね。1Q84は読まれましたか?

    Shomyo さんのコメント...

    気の弱さが出ているのか、量に圧倒され、not yetです